(折々の思い11)

それでも募る心配:バイデン政権の発足

 

 今朝起きて、気になっていた6時のNHKニュースに飛びついた。そして、日本時間の未明に行われたバイデン米大統領の就任式が懸念していた混乱もなく無事終わったことを知り、フッと安堵のため息を付いた。1月6日の議事堂乱入事件のあまりにも醜くて酷い映像を見ただけでなく、就任式当日の戒厳令のようなワシントンの異常な警備状況を知り、全国の州議会でも反バイデンのデモが起きるかもしれないとの報道もあったからだ。

 バイデン氏が気候変動に関するパリ条約や国際協調路線への復帰を唱えるなど、やっとアメリカがまともな方向に舵を切ることを心底から嬉しく思う。分断を修復し、全てのアメリカ人のために全身全霊を尽くすと誓う新大統領の言葉にも誠意が感じられる。心から新政権の成功を祈る気持ちだ。

 しかし同時に、互いに憎み合うほどの分断と対立が深まったアメリカ社会が簡単に修復されるとは思えない。識者の分析の中にも、「選挙が盗まれた」とのトランプの扇動でバイデン政権は非合法だと信じて政権転覆を図るべく結束する極右や白人至上主義団体の存在が指摘されている。さらに、米極右の動きは欧州や旧ソ連圏等の極右とも繋がりがあるという。米欧関係や米ロ関係の修復にも複雑な影響をもたら可能性がある。それにしてもトランプ大統領が表舞台に立てない状況がこれから4年間は続くと考えると、トランプ主義は相当風化するだろうと思うのだが、トランプ信奉者の勢いは持続するとの論調もあり、心配は募る。

 格差是正の政策を積極的にとることもなく、相互依存関係が深まる国際社会の構造にも思いを致すことなく「アメリカ第一主義」を唱えた前大統領の言動に煽られて、多くの米国民が偏狭な視野と品位に欠ける行動に走るようになってしまった。国内分断の修復はトランプ支持者(反バイデン勢力)の抵抗で大きな困難に出会うであろう。前途は不確かであり、不安な気持ちは拭えない。

 こういう状況であるからかこそ、欧州、日本、アジア諸国、カナダなどが連帯してバイデン政策を支持することが極めて重要になる。

                       (2021年1月21日)