(折々の思い13)最近の国際情勢の変化について思うこと

 近頃の世界を眺めると、変わっていない部分やかなりの速度で変わりつつある側面がある。部分的な変化や大きな流れの変化などいろいろだ。

 変わっていないところは、以前にこのコラムで書いた「ならず者国家」が依然として(ロシア)、あるいは今まで以上に(中国)存在感を示していることがある。しかし、後述するように、中国の存在感が一層高まっていることから、これに対応する新たな動きが始まりつつある。

 変わったこととして、まず地域的視点からはミャンマー情勢が第一に挙げられる。軍事政権は多くの場合、力づくで抑え込もうという本質的な性格があり、その本能的な自己中心と自己保全意識から視野が狭くなり、「人間の心」に配意をしなくなってしまうのは困ったものだ。アウン・サン・スーチー氏やその支持者の動きに対する恐怖感から「クーデター」に走り反対者に銃を向けるに至った。中国は「軍事政権」と言わないかもしれないが、香港民主派排除への動きは、民衆の反中的動きに危機感を抱いてなりふり構わない行動にでた点で同根である。

 より大きな観点からの変化として、中国が共産党独裁のもと長期にわたり急速な軍事強国化を進め、とくに習近平体制になってからはアメリカに対峙しようとして益々大量破壊兵器や遠距離海洋兵力を増強していることがある。強化された軍事力を背景に国際関係における姿勢は一層独善的で傲慢不遜になり、これを抑えることが難しくなりつつある。とくに尖閣諸島付近や東シナ海、南シナ海での海洋行動などが成り行きによって米国等と軍事的対峙や衝突をもたらす可能性も排除できないので、日本への影響は実に深刻である。こうした中で、世界をリードすべきアメリカがバイデン政権になって国際協調主義や同盟国との連携に回帰したことが本当に良かったと思う。トランプ政権が更に4年続いたとしたら、世界は益々混乱が高まり危険な状態になったであろうので、これは世界全体にとっての大きな肯定的変化である。まだまだ不安が多いが少しだけ安堵の気持ちを抱くことが出来る。バイデン政権になって、制止し難い中国の強国化に対する国際的連携の動きに向かいつつある。この中で、日米豪印4カ国のいわゆる「クワッド(Quad)」連携が強化され、欧州も米国との協調関係に回帰しつつあるのも心強い要素である。

 私は個人的に中国は好きであり経済的にも中国は日本とって極めて重要であるが、習近平体制下の軍事力強大化とその独善的拡張主義は日本にとって安全保障上の極めて大きな脅威であるので、バイデン政権下での日米安保体制の強化や「クワッド」連携は必要な要素である。先週、アメリカのブリンケン国務長官とオースチン国防長官が相次いで日本と韓国を訪問して会談した後、中国の外交担当トップの楊・王両氏がブリンケン氏を追いかけるようにしてアラスカに行って激しい米中会談を繰り広げたのは、中国がアメリカを中心とする国際連携に強く神経をとがらせている証拠である。

 ともかく中国は引き続き日本にとって深刻な心配の種だ。中国に在住経験のある信頼できる複数の識者によると、中国は基本的に確固とした力の信奉者であるので、民主主義とか法の支配を唱えてもあまり効果はないらしい。日本に出来ることは、できるだけ頻繁に中国と対話を続けながら言うべきこと言う中で一定の相互理解と信頼関係を築き、それを踏まえ日米や「クワッド」の連携のなかで中国との衝突回避や妥協策を探っていくことである。対立する者同士が距離をおいて避難し合えば関係は一層悪化する。対面して意見を言い合うことが大事である。たとえ困難で長期に及ぶとも、それが外交の役割である。

                       (2021年3月25日)