(注)以下は、2013年12月の「絆サロン」の概要である。3人の在日外国人による日本論でもある。
第24回絆サロンは、12月9日に霞が関ビル35階の東海大学校友会館で行われた。今年最後のサロンなので忘年会を兼ねて気楽な会にしたいと思って、日本に住む3人の外国人に、それぞれの日本観や日本人観をざっくばらんに日本語で語ってもらった。実はあらかじめ、「お世辞は抜きに率直に話してください」とお願いしておいたせいか、忌憚のない感想が披露された。我々日本人にとって、ちょっとはっとするような、しかし、なるほど、やっぱりそうかと思うことが多く、結果としていろいろ参考になったと思う。3人に共通していた思いは、「日本人て、もう少しはっきり自分の意思を表明した方がいいじゃないの」ということのようだ。
語っていただいたのは、上智大学に2年留学後、カリフォルニア大学(バークレー校)を経て、1991年に再来日し、日本人と結婚されているスーザン山田さん、韓国人の女性ジャーナリストで、1987年に韓国「土曜新聞」東京特派員として来日、その後東亜日報、朝日新聞等を通じて幅広い活動を展開、現在はJPニュース、KR NEWSを設立して日韓双方向に情報発信をしている柳在順さん、もう一人は、フランス人でストラスブ-ル大学修士課程を修了後、日本を知りたくて2008年に来日、東京のフランス国際校で体育を指導したり、日本人へフランス語を教えながら、熱心に柔道と書道を学んでいる、シルヴィー・バックさん。3人の話のポイントを要約してみる。
スーザン山田さん:アメリカは自立とか自分で行動を起こすことが大事な社会だが、日本に来て「犠牲になる」ことや「運」ということを知るようになった。再来日して知り合い、好きになった日本人の男性は名古屋のお寺の息子さん。結婚を前提にお付き合いをして、相手のお母さんにも受け容れられたと思っていたが、正式に相手の両親のご了解を得ようとしたら、最初はダメと言われた。ショックで裏切られた気もしたが、理由はお寺がお世話になっている周りの人たちへの配慮らしい。日本人には自立心に欠けるところがあり、そこまで周りの人のことを考えるのかと驚いた。ご主人(になるべき人)は、「待つことが大事、我慢して待とう」と言う。2年ほど待って結婚することができたが、人の絆と言う見地からは、すぐアクションを起こすだけでなく我慢したり待つことの大事さや周りへの配慮について学んだ。古い考えにも一理ある場合があるようだ。
柳在順(ユー・ジェースン)さん:父が植民地時代に強制徴用され九州の炭鉱で労苦を強いられた経験から、自分はもともと反日的であったが、日本と韓国を行き来してきた結果反日派の立場は変わった。日本で多くのことを学び、日本の経済産業力を羨ましく思ったりもする。韓日双方向に発信する作業は事実を報じても反発があったりで、苦労も多い。しかし、韓国では反日感は強いものの日本について正しい知識を持つ者も少なくない。
1980年代にジャーナリストとして初来日したころ、日本人にいろいろ助けてもらった。当時の日本人は、親切で豊かで他者への配慮もあり、人の話をよく聞いて助けてくれた。90年代以降失われた10年、20年を経て日本人は変わってきた。優しさが減り、表情が厳しくなった。おもてなしの心が少なくなったようにも思う。日本は以前は目的意識を持ってアジアのリーダーを目指していたように思う。今は、目的意識を失い、気品もなくしつつある
韓国人は率直で、怒りや悲しみをはっきり出すが、日本人は30年ぐらい付き合っても本心を見せないことが多い。日本人は他人の前でもう少し率直になって自分の気持ちを表していいのではないか。
シルヴィー・バックさん:来日当初、日本についての知識もなく、漢字だらけでわからない事が多かった。人が多いことに驚いたり、満員電車に乗るときも争わないことにびっくりしたりした。今は日本のことがかなり分かるようになったが、日本人は相手のことを考え過ぎたり、自分の言いたいことをあまり言わない。仲良くしたいと思っても、何も言わないと相手のことが分かりにくい。男女間のコミュニケーンは良くないようだ。黙っていても相手の気持ちがわかるとの日本的やり方は、まだ十分理解できない。フランスでは全部言わないとわからないからだ。日本人は他の人と同じようにするのに熱心で、「私もそう思う」という。もっと自分で考えた方がいいのではないか。フランスでは「タテマエ」はない。正しい、正しくないをはっきり言う。他人と反対のことを言いながら理解し合うことができる。でも、私は日本人の友達と飲み会を重ねていくうちに理解も増してきている。
日本人はコミュニケーション不足だと思う。私が日本人からいつも聞かれる質問は「納豆が食べられる?」だ。以前は電車の中で本を読んでいる人が多いのに印象付けられたが、最近はスマホばかり見つめている。
(質疑応答)
スーザン山田さん:欧米人のコミュニケーションが良いからそうすべきと言っても、昔の日本でも肩を組んだり、助言をしたり、絆が強かった。現在は自由が増してきたが、以心伝心が壊れている。だから、意見を言うことも大事だ。
柳在順さん:韓日関係はいま非常に悪い。お互いに怒ってもいい。喧嘩してもいい。もっと意見をぶつけ合うべきだ。
シルヴィー・バックさん:日本人の我慢にはびっくりした。フランスではガマンがない。でも、エレベータ―が遅いとき、日本人は我慢が足りないようで面白い。
柳在順さん:(なぜ反日から親日になったのかについて)日本時代に父母が受けた苦労の経験から日本に反感があったが、日本のドラマが好きで勉強もした。植民地時代のことを許すわけではないが、日本人と多く付き合っているうちに理解して親しくなった。困っているとき助けてくれた人もいる。
(慰安婦問題について)この問題についても発信しているが、日本人の言い分を認めると韓国人からやられてしまう。日韓間では、悪いことは悪い、良いことは良いと互いに認めるべきだ。慰安婦問題について、日本人も韓国人も一緒になって調査をして、議論すべきである。
こんな議論があって、懇親会になった。皿やグラスを手にあちこちで人の輪ができて、ワイワイガヤガヤと熱気のこもった意見交換や親睦の会話が続いた。3人の外国人ゲストの指摘に刺激されてか、皆、楽しそうに自分の意見を開陳していたようだった。時間はあっという間に過ぎ、会場係から「もうお時間です」と言われて、やっと中締めをしてお開きとなった。
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