小川郷太郎
フランスとの国境に接するドイツ南西部の「黒い森」は鬱蒼とした常用樹林が多いからこのように呼ばれるそうだが、訪れた夏の終わり頃はきれいな若緑色に覆われた草原部分が目を射るほど鮮やかだった。(1982.8.22.)
ゴルバチョフ時代の旧ソ連末期は歴史の大転換期で面白く、そこでの2年数カ月の生活は貴重な体験となった。ソ連式政治社会体制は、人間不信体制というか監視・盗聴・検閲も日常的で、その驚嘆すべき非人間性に驚いた。軍事優先のためか経済は遅れ、国民は信じられない非効率性のなかで日々の生活を強いられていた。だが、権力の象徴のようなクレムリンの外観は意外と美しく、輝いて見えた。(1988.10.8.)
旧ソ連時代の国内出張でモルドヴァ共和国に行った際、インツーリスト・ホテルの窓から描いた風景。旧ソ連時代の社会にはくすんだ寂しい雰囲気が漂っていたが、教会の青い屋根の色だけが心に残った。(1990.2.12.)
旧ソ連のペレストロイカ時代には外国人の国内旅行制限も緩和された。ソ連に併合されていたバルト3国に2度ほど足を運ぶ機会があったが、モスクワから来ると3国に漂う西欧的雰囲気に新鮮さを感じた。屋根だけ見ても古いモスクワとは違う。(1989.8.4.)